はんすう

はんすうとは、牛が食べ物を口と胃の中をいききさせ、何度も何度もかんでもごもごすること。
私たちが口にする牛達は、大抵ははんすうはしていないらしい。
何故なら、食べ物を沢山あたえられているから。
時間の流れが彼らよりも速いから。
遠くに沈む夕日を眺めたり、空を見上げたり、雲を追いかけたりしつつ、口をもごもごしないらしい。
はんすうをする牛と、しない牛の目は違って見えるらしい。
らんらんと輝く目と気力のない目。


タイで出会った世界を回る写真家達は、日本人の目は死んでいると言っていた。
力がないって言っていた。
私たちは、はんすうしていないのだろう。


時間の流れがはやくとも、はんすうしていたい。
力のない死んだ目にはなりたくない。
時間の流れがはやくとも、はんすうをすることはできるのだろうか。